FULLMOON・ROAR-S
・・・別にそれが恨めしいってワケじゃなかった。
だからって自分が秀でてるって思ってるワケじゃなかった。
ただ
ただ皆と同じ風にいたかったダケで・・・
アタシがこの能力に気付いたのは2年前。
・・・獣人族っていうよりも、動物化って言った方がいいのかな?よくアニメで猫の耳とか生やした女の子が闘ってたりするけど、そんなロマンチックなモノじゃなくて。ただたんに体から毛が生えてきて、だんだん、手足が変わってって・・・3分もあれば、もうちゃんとした=。
ちゃんとした?
ちがう。羽根がある。あの鳥の羽が。
アタシが初めて変身した時は部屋にいたから、誰もアタシが変わったコトに気付いてない。
一人だったから・・・だから誰にも言ってないし。今となっちゃなれっこだし。
最初は飛べなかった。
でも、そんなの2年前の話だし。今はもう、この自分の2倍はあるだろう翼を1振りすれば、風が起こる。
つづけて2振りすれば体が浮く。
3振りすれば・・・もう空中を進める。
けっこう、おもしろいかもしれない。
それと同じように走るのも好き。
前は四つん這いっていうのは難しかった。足がもつれちゃうから。
でも・・・やっぱり今は・・・きっと車より速いかもしれない。
でも、自分でこの姿にはまだよくなれないな。
だってこの姿になるのは、週に2、3回で。
いつまた人間に戻るかも分からなくなるし。
だけど,2年もすればそのタイミングはわかるようになる。
アタシの家は海沿いの山にあるから・・・夜飛んだって誰もいない。
今日はいい満月。
しかも今日は・・・そう。アタシが変身する日。
月の光を浴びて、アタシの白い体は金色を帯びる。
金色の翼で、夏の夜の潮風をかき分けながら、アタシは水平線目指して飛び立った。
運良く親は2、3日帰ってこない。
今日は南の方へ行ってみるつもり。
だって島があるかもしれないでしょ?
・・・その島にアタシと同じ体質の人がいるかも・・・・・そんな想像しながら、どんどん陸地からアタシは離れていった。
すべては好奇心の為に・・・。
いろいろ考えながら翼を大きく振るアタシ。
きっと普通の人なら恨むであろう能力。でも、そんなにいやがる事もないじゃない?
誰に迷惑かけるってワケでもない。
そんな事考えてる間に、ちょっと翼が疲れてきた。
変身、解けなきゃいいケド・・・。
でも、ここで止めるワケにはいかない。
だってまだまだまだ・・・・陸が見えないんだもん。
今になって、ちょっと汗が出てきた。
・・・犬は普通汗はかかない。けど、肉球からは汗が出るの。
だらだらと汗が滴った。
どうしよう・・・・アタシ、疲れたんだ。
暇だからって冒険しようなんて考えるんじゃなかった。
バカだアタシ・・・・一人だから愚痴を言う相手もいなかった。
なんで、海の向こうに行こうなんて考えたんだろう。
・・・そうだ。
皆と同じになりたかったんだ。
そう。今日は友達と南の方の国に行くハズだったんだ。
・・・・もちろんアタシも行きたかった。でも・・・。アタシはこの姿に・・・。
そう思うと涙が出てきた。
悲しいんじゃない。
悔しくもない。
・・・だって別にこの姿の自分も好きだから。自分を好きじゃないなんて、そんなの嫌だから・・・。
もう月も沈んだ。光がないじゃない。
でも、それでも南がわかるなんて、ちょっとおかしくなった。
うふふ・・・・へんなの。
・・・・そこでアタシは自分の考えとは別に、体が勝手に海へ降りた。
あ・・・そうか疲れたんだ。
少し寝れば・・・きっと・・・。
爽やかな波の音、太陽の光。
アタシは目を覚ました。・・・・・・生きてた。
サメにも食べられてないね、よし、行こう!
そう思ってアタシは翼を動かした。
本当ならここで、翼を翻して青空に飛び立たないといけなかった。
・・・でも・・・もんどりうってアタシは顔から海水に落ちた。
飛べない。
翼が濡れたんだ!
バカ・・・・アタシ・・・バカ・・・・・・・。
また涙が滲んだ。今度は悔し涙だった。
どうしよう、アタシこのままサメに食べられるの?
それとも海のもずく・・・・違う?もくずだっけ?あれ?
・・・ともかく浮いているのが精一杯のアタシに何ができるっていうの!?
いっそ魚になれればよかった!!嫌い!!狼なんてヤダ!!うわああん
・・・またいろんな事考えながら、ついにアタシは泣き出した。
一人で。
だってまだお父さんとお母さんに会いたいし、友達にも、好きな人にも会いたかったもん・・・。
その時。
太陽の光を遮って、何か大きな動物がアタシの頭上をよぎった。
「君、何してんの?こんなトコで一人で」
パステルグリーンのような透き通った声で、その動物はアタシに話し掛けてきた。
もちろん、人の言葉では分からないけど・・・。
その動物の姿はアタシと似ているようで、ちょっと違った。
鷲のような頭と翼、ライオンみたいな体つき。・・・なんだっけ?
あれ?そうだ・・・グリフォンっていうんだ!!
よくゲームとかに出てくる・・・。
「グリフォン!!」
アタシは思わず叫んだ。
「ああ、やっぱりそう思う?君もお仲間だろ?」
相変わらず透き通った声で返事が返ってきた。
「お仲間って・・・・アナタも前は人間??」
「そうだよ。僕の名前は西崎レニアス!!ハーフだよ」
「なんか変な名前・・・」
ちょっとおかしかった。
「なんだよーー、じゃ、君はなんていうの?」
「アタシ?・・・アタシは・・・なぎ。近藤凪だよ」
そう。忘れかけてたけど、アタシはそんな名前だった。
「君こそ変な名前じゃん?」
レニアスは声と裏腹の、鳥の嘴で笑った。
「何!?いきなり出てきて笑って・・・・アンタこそ何してんの!?こんな所で!!」
水面から出ている顔で精一杯アタシは吠えた。
するとレニアスがいきなり、すごい速さでアタシの首根っこをくわえた。
「ぎゃっ!!食べないでっ!!!」
ナンデか、アタシは食べられるのかと思った。
でも、レニアスはそのままアタシを空中に引っ張り上げた。
アタシは大きく体を震わせて、水気をきって、翼を羽ばたかせた。
今度はちゃんと飛べた。
アタシはレニアスがいいヤツと確信した。
「あ・・・ありがと・・・」
「どういたしまして。君も僕もきっとお互い、初めての仲間でしょ?」
やっぱりあのきれいな声でレニアスが笑った。目も優しかった。
「レニアスはどうしてこんなところに?アタシはただ飛んでただけだよ・・」
「アレ、君は行かないの?」
「えっ?ど・・どこに?」
「僕らみたいな獣の集まる、年に一回の集会・・・『フルムーン・ロアーズ』に・・」
「フル・・・え?・・・なにソレ?」
「僕もね、よくわからないんだけど、なんでも年に一度僕らみたいな人たちが南の無人島に集まるんだって。風の噂だけどね」
・・・知らなかった。
ただ、なんとなく南に行きたかったから、ムリにここまで来たのに・・・
「ねぇ、レニアス、そのなんとかムーンなんとかの場所、知ってるの?」
「ううん、ただ何げに進んでた」
・・・ちょっとよくでき過ぎていた。
だって・・・こんな広い海で出くわすなんておかしいもん。
「・・・でもやっぱり進むよ。僕は・・」
「アタシも」
「じゃあどっちが速いか・・」
言うや否や、アタシの方が速くスタートしてた。
瞬発力はアタシの方が速いみたい。
「ま・・・ちょっ・・・おおい凪ー!!」
そうレニアスが叫んだ後、彼もすごいスピードで風を切っていた。
案外すぐ陸地に着いた。
でも、アタシはヘトヘトだよ。・・・・・だって、一昼夜ずっと飛んでたんだよ。
・・・少し遅れて息をきらせたレニアスが降りてきた。
長距離は苦手みたい。
「あれーー?また参加者!!どうぞこちらに!」
見渡す限りのジャングルから、ひょこつと変な生き物が顔を出した。
ネズミのような・・・でもちょっと大きいし・・・。
「とりあえず行こ」
レニアスは走っていった。
「まってよ!!」
アタシは置いてかれまいとかけていった。
草をかきわけるといろいろな動物がいた。
豹に蝙蝠の羽とか、角の生えた鰐のような蛇のような・・・そんなモノが。
・・・・その中でも一番大きい、まるで白熊のような、でも、顔は鰐と犬を混ぜたような。
そして、翼が4枚も付いている。
一言で言うと、白い龍?
そんな生物が声をあげた。
「世界から集まった聖獣たちよ!!ようこそ、『フルムーンロアーズ』に!」
アタシの周りにいた獣たちが、ワーッと声をあげた。
「今宵、満月が昇って、沈むまで囁き続けよ!!さすれば月が己のる願い叶えようぞ。
・・・イミわかんない。何ソレ?願い?
「何、難しい顔してんの?」
レニアスがアタシの顔を覗いた。
周りが騒がしい中、アタシはびっくりして尻もちをついた。
「レ・・・レニアスは意味わかったの?」
「えーと・・まあ、朝までいろいろ話して楽しめって事じゃない?」
・・・・テキトーだっていうコトがすぐにわかった。
でも、周りの動物達は、楽しそうだった。お祭りみたいだった。
まるで、「動物の謝肉祭」って感じ?アハハ
あーっという間の一晩だった。
レニアスとアタシはいろいろな獣達と友達になった。
そして、こういう事も分かった。
『フルムーン・ロアーズ』って、アタシたちのような体質の人たちが、他の人間に言えないような悩みを、うちあけたり、気を休めたりするお祭りだって。
そして、そんな悩みや願いを話しているうちに、御月様が助けてくれるんだって。
・・・そんな集まりだって。
私達の内に潜む、『聖獣』の血が、この島に集まるようにするんだって・・・。
帰りの海の上、レニアスとアタシはお互い日本人だって事で、今度会うことに決めた。
「こんどは人間であえるね?・・・じゃあ凪・・・また今度!!」
そう言ってレニアスは急旋回して山の方へ飛んでいった。
すると時間が来て、アタシは人間に戻った。
・・・別に恨めしいワケじゃなかった。
でも皆と同じがよかった。
・・・・でも、もうそうは思わない。
「自分」と同じ人は絶対いて、絶対気が合う。
だから「自分」を嫌わないで、仲間を探せばきっと・・・。