幻想住人録

 

しりとりゲームROUND2

 

 

ゲーム開始から4年後。

 

中国が「ジンチャ−」を国から無くした。

ジンチャーとは中国語で警察だった。

 

 

アメリカさんとイギリスさんは談笑中、その連絡を直接中国のトップから聞き、笑いが止まらなかった。

アメリカさん「中国さん、国からなくなったのは警察だけじゃないようだね。秩序という隠されたワクチンも失ってしまったようだ。それとも街の秩序は今度は軍隊が担うのかね。」

イギリスさん「しかし、警察も軍隊もあまり変わらないじゃないですか。特に中国さんのところはね」

中国さん「痛いところをつきますな。それでは失礼します」

中国は言葉少なにホットラインを切った。

 

 

イギリスさん「アメリカさん、前はあれ程中国、中国と言っていたのに。今ではまるで」

アメリカさん「その先は言わないでくれたまえ。なあに、思ってみれば喧嘩する程の相手ではなかったというだけの話だよ。私の政権での対中国対策は簡単な飴と鞭と言えばわかりやすいかな・・・。ジェーナ・・・ああ、私の娘なんだが・・彼女をを扱うことの方がむずかしいよ」

イギリスさん「今年のシリトリゲーム・・・アメリカさんの次が中国さんでしたからね。いいようにやったと言う事でしょうが・・・飴と鞭とは?」

アメリカさん「コンゲージメントだよ」

イギリスさん「はあ・・・よくあなたからお聞きしますが」

アメリカさん「封じこめ政策と関与政策を足したものさ。あのような独裁国家を敵視して、崩壊に導くだけだったのは冷戦時代のものさ。私は臨機応変に対応した。悪くなればその芽を摘む。良くなればその芽を育てる。しかし、どの結果もアメリカ印しというわけだ。ブランドだよ、他国を巻き込んだ政策だから大袈裟な程に誇示したいと思っていた」

イギリスさん「天安門の事件の時は前者の封じ込め・・・中国への日本産業などの参入が集中した、いわゆる活性時は・・・関与政策に・・・他国からでもわかりやすい程の対応でしたな。まさか・・・今回も何かの圧力を」

アメリカさん「人聞きが悪い。圧力ではなく、私は捧げられたんだよ。このゲームで使ってははマイナス点になるだろうが、アメリカでは大いにプラス点をあげたい代物だよ。それを中国くんは警察というものを無くす事により、もっと広い世界的な流通を試みたわけだ。よい牧場になる。金になる。裏の力も動かしやすい。国がいままで口出しをする事ができなかった裏の存在にまで手を広げられるわけだ」

イギリスさん「中国は大麻の牧場ですか。しかし、裏の世界や市場を動かすのはあまりにも危険では。」

アメリカさん「陰と陽は表裏一体・・・そういう言葉があるよ。そうなりたいものだね。」

イギリスさん「中国さんにはお似合いの言葉ですな」

アメリカさん「裏と繋がるのに、直接自国の旗をかかげることはしない。中国は喜んで牧場になってくれたよ。牧場というのは大麻を育てるという意味ではない。わかるね。裏産業の工場といってもいい。・・・・・ポリスシステムなんて序の口さ。中国は国の正義を全て取り除いてくれるだろう。大きな裏組織を亡命させるよい宿場にもなるよ。このゲームは恐ろしい。自然に全てを一つに統一していくつもりらしい。全てを淘汰出来る国はたった一つだ」

イギリスさん「表も裏も握っているものが・・・・・」

アメリカさん「すべてにおいての・・・正義だ」

 

 

 

 

イスラム共和国首都イスラマバードでは、緊急宣言として、国王が国民に告げた。

愛する国民達。

我が国はこの星を見捨てる。

ジハードはもう行われない。

戦いの先にあるものは、必ずしも正義たる栄光ではなかったのだ。

私はそれを予言した。

そして、予言書『モア・ド』は私に教えてくれた。

世界は闇に向かって進んでいる・・。

ならば、その未来は、愛する国民に委ねたいと思う。

あえて、我が国は戦いを放棄した。

その為に愛する国民達は苦しむかもしれない。

餓えに苦しむかもしれない。

暑さ、寒さに身悶えるかもしれない。

悲しみの涙の洪水が起こるかもしれない。

唯一神の鉄槌がいよいよ下されるかもしれない。

だが・・・未来を知った私はこれ以上国民を欺く事はできない。

愛する国民に告げる。

我が国は先程、全世界に向けて、

神をこの国から抹消する事を宣言した。

神の意志によって運ばれてきた運命は投げ出される。

しかし、私は見たのだ。

未来で救われる者は、神の力によって救われる事はない。

しかし、国民一人一人の胸の中には神がいる。

親でもいい。愛する者でもいい。

神は身近に存在するのだ。

世界にその宣言を送り、続いている・・・あるゲームを降りる宣言もした。

このゲームが続けられている以上・・・確かな安寧はこの先望めない。

しかし、われらは戦いの果てに苦痛を得る方を選ぶ事はもうやめたのだ。

最後に愛する国民に告げよう。

この星で、我が国だけは・・・・醜くく終末を送る事はない。

人間であり、心に神を宿す存在として・・・世界の滅ぶその時まで見届けよう。

 

 

 

 

世界中に麻薬が流通し、テロが多発した。

このゲームは国からなくなるものもあるが、逆に増えるものもあったのである。

次々と国家が、秩序を守るか、形だけでも国家尊厳を守るかを選択した。

では、秩序と国家尊厳を同時に守る事はできないのか。

皮肉な事に、気が付けばこの世界は陰と陽では、陰の勢力の方が根が広かったのだ。

正義をかざす国は、生き延びる事ができなかった。

それはどんな言葉でも説明できない事だが、つまり、闇に支えられてこの世界は成り立っていたのだという事だ。

殺人、強盗、強姦、汚職、密輸・・・何一つ止める事ができない国が増えていった。

しかし、その国はある意味豊かになった。

正義などというものはもともとなかったのかもしれない。

 

そこでたった一国が正義という言葉をかざした。

アメリカさんだった。

アメリカは考えたのだ。

古い文化を持たないアメリカはこのゲームに勝ち目がないという事を。

勝てるものは武力だ。

正義の武力。

正義の武力という剣で、次々と悪の国家を制圧した。

まるで、このゲームの優勝国が決まる前に、地球の王者になってしまおうというように。

国々はアメリカの世界制圧に口を出すことができなかった。

言える程の力と、正義がなかったのだ。

アメリカは甘い飴を世界中に前もって配っておいたのだ。

「ゲームをおりなよ。そうしたら僕が君の国を守ってあげるから。そうだろう?ゲームをおりたということは、いずれこのゲームで優勝する僕の国の仲間になったも同前なんだ。最後まで戦って、ぼろぼろの国家になってから僕らと戦っても仕方がないだろう。」

 

 

日本くんはなさけないものだ。

まだ大きなものを国から捨てられない。

この尻取りゲームの発案国が、ゲームの流れをアジテートすることができないのだ。

小さい国家のわりには文化だけは誇れるものが多い。

それをチマチマと未だに小出ししているから、国内には特に大きな変化はない。

しかし、いよいよあれを尻取りで使用することになった。

自衛隊。

日本もアメリカの配っている飴に手を出したのだ。

「日本くん、中途半端な力は死を早めるよ。大丈夫。僕が君の国を守るから、余計なものはこの際捨てちゃおう」

しかし、アメリカは突然、この尻取りゲームで「他国にある米軍基地」を使った。

世界中の米軍基地はすべて退去し、母国に帰っていった。

日本を始め、多数の国家が無防備な状態となった。

アメリカの言葉を信じ、国を守る手段を捨ててしまった国たち。

 

日本くん「あんまりですよ。守ってくれるんじゃなかったんですか?」

アメリカさん「君なんて始めから眼中にないんだよ。でも安心しなよ。他の国も同じだから。どこも戦争を起こす力なんてないんだよ。だから攻め入られることもない」

日本くん「そうか、ああ、良かった」

アメリカさん「ああ、一つだけあった」

日本くん「え」

アメリカさん「僕の国。世界中にちっている軍力も集結し終えたし、いまは寝ていても世界を征服出来るよね」

世界各国「・・・・・・」

アメリカさん「じょーだん、じょーだん。みんな、仲良くやろう。さあ、次は中国さん。君の番だよ。何を捨てる?『チ』だよ。よかったね。たくさんありそうだね」

中国さん「・・・・出口(チューコウ)・・・」

世界各国「・・・・!!」

日本くん「あれ・・・みなさん、どうしたんです?中国さんはなんと」

アメリカさん「・・・・輸出・・・・そう言ったんだよね・・・・」

中国さん「・・・・・・」

アメリカさん「・・・あーあ、せっかくの牧場が一つなくなっちゃった。まあ、いいけどね。僕にはいっぱい牧場はあるから・・・。中国さんは鎖国でもするつもりらしいからね」

 

 

中国はしばらくしてこのゲームを降りた。

あれ程の大国が・・・あれ程の長い歴史をもつ国がゲームを降りた。

続けようとすれば、かなりこのゲームを続けることができたろうに。

いや、優勝さえ狙えたかもしれない。

中国は産業輸出(密輸も含めて)の糸を全て断ち切る発言をした翌日に、ファックスという手段でゲームを降りる旨を世界の首脳に伝えた。

 

ゲームを降りる発言をしたきっかけ。

輸出物停止宣言をした夜、アメリカからあるものがファックスによって送られてきたのだ。

アメリカがの軍事機密の一部のデータである。

中国はそれを読んだ後、ゲームを降りる決断をした。

あるものを最後にアメリカに向けて輸出して。

 

 

日本くん「中国さんはねばると思ったんですがね」

イギリスさん「1998年のパキスタンの核実験に、中国さんは技術供与した可能性が高い。アメリカさんの言う通り、彼等は何も言えなかったじゃないか。アメリカさん、核だけは許さないですよね」

アメリカさん「ああ。もちろんさ。あの国はイラン国境近くにあるグワダル港に随分とこだわっていた。多分なんだが、グワダルを拠点に・・・中東・アフリカ諸国と関係を強化して、ペルシャ湾岸の石油の利権にも口を挟んできそうな感じがしたしね」

アメリカはほくそ笑んだ。

 

 

ゲーム開始から9年後。

ゲームを降りた国の国民が裏のルートで売買されていた。人身売買がテレビCMで流れる。

インターネットのオークションでは国家資源が普通に販売されていた。

日本では自動車・銀行・養護施設・製紙工場がこの年になくなった。

元カーショップや、個人のカーマニアが改造車を作って警察の目を盗んで走る、と言う日々。

走らす方も必死だ。車の走行が廃止された今、バイク、自転車のみが道路の支配者だった。地下鉄の数が増え、その為に、ニホンの地下は蟻の巣状態だ。

だから誰もいない道路で車を走らすことは非常に目立った。

法の改正により、こうした事の処罰は大きくなった。

というよりも、今までが軽犯罪とみなされていたものまで無期懲役、ひどいと死刑となった。

自衛隊のなくなった現在、警察が武装化・・・という事になった。

国は増加している犯罪を鎮圧する為、見せしめに死刑予定者、又、現在の法で死刑として扱うこととなった懲役囚人(罰された者のほとんどになるが)を公開処刑にした。

日本では起こり得ない事態だ。

また、銀行が国から消えたことにより、すでに経済状態はパンク直前だった。

国民は紙の有り難さも知ることとなる。

情報を手に入れる為の本や新聞、そういった再生紙から、トイレットペーパー、コピー、ファックス用紙、ノートや教科書などの教材(すでに教育の場はないのだが)、タバコ(放送アルミ紙など)、封筒、段ボール、その他紙と関連のあるもの全てが倍以上の値上がりをした。

 

日本の公開処刑のニュースは全世界を震撼させた。

日本という国家はすでにこのゲームによって踊らされ、崩壊していたのである。

3年前から世界中で定期的なある発表を行うことになり、テレビというメディアは当分、国民の目を釘付けるものとなった。12年後のマスコミメディアの世界中からの撤退までは。

世界的発表は『今年の自殺者』。

世界が廃れれば、世を儚んで死ぬ者が増える。

次第に芸能人や政治家など、有名な名前も自殺者の名前のリストに加わっていった。よけいに国民の目はテレビに注がれた。

個人個人までもがこの尻取りゲームに参加しているようにも思えた。彼等(自殺者)は自分以外の全てを棄てたのだ。このゲームからの放棄だった。

いや、元から国民も参加者なのだ。

北朝鮮では尻取りゲームの事が上層階級の者にだけ伝えられた。

そして国民投票(本当に限られた、上層階級の国民だが)により、このゲームに国民の声を入れたのだ。

世界中はその事態に動揺した。

北朝鮮が国民の声に国家の未来を委ねた、ということにではない。

政府の人間以外にこのゲームを知るものが出てしまったからだ。

北朝鮮は大きなペナルティーを受ける事となった。

 

 

恐れていたことが起こった。

世界中の国民がこの尻取りゲームの事を知ってしまったのだ。

 

世界の国民はこれに反発。

国民と政府の間で三日間の戦いがあった。

どういうワケか世界中であったこの事態は三日間で幕を閉じた。

ゲーム開始から10年後。

世界中で国民投票を行い、この尻取りゲームが続けられることとなった。

 

続く 

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