
クトゥルー 魔界監視局
鍋島家の猫
なべしまけのねこ
Cat of Nabeshima
別名
●鍋島家の猫(なべしまけのねこ) ●こま
●鍋島の化け猫(なべしまのばけねこ)
●キャット・オブ・ナベシマ
一番有名な、猫の化けた吸血の悪霊。
恨みを持って死んだ自分の御主人様の血をなめて、その恨みを晴らし、
相手を呪い続けたという、飼い主思いの妖怪猫。
だが、こんなおどろおどろしいストーリーもある。
戦国時代の肥前(佐賀県)は、もともとは龍造寺氏が治めていた国である。
だが、有力な家臣、鍋島直茂にとって代わられ、鍋島家が肥前を納める事となった。
時が経ち、龍造寺家の直径である又一郎も、藩主鍋島の家臣となっていた。
囲碁が好きな肥前藩主鍋島は又一郎と囲碁をしている時に、機嫌を損ね、
又一郎を斬り殺し、その死体を庭の古井戸に隠した。
この時、又一郎の身内は年老いた母親だけであった。
帰宅せぬ息子のことを心配していると、
飼い猫である黒猫の「こま」が、血にまみれた又一郎の首をくわえてきた。
事を知った母は、藩主を呪い自害する。
そのとき、「こま」は母親から流れ出た血を、全て嘗めつくすと何処かに去ってしまう。
猫は藩主の妾(めかけ)の「お豊」を締め殺して、その姿を借りて、
夜毎、肥前藩主と過ごした為、彼は日毎に衰弱していった。
薬師達にも、これに効く薬が見つからなく、夜になると症状は悪化するばかり。
よって原因追求のために見張りを立てたが、ことごとく眠らされてしまい、
家臣達は近くの寺の住職の元まで訪ねた。
寺の僧が藩主のところで祈っていると、
家臣の伊藤惣太(小森半左衛門とも)が不寝番をしたいと言ってきた。
彼は自らの太ももを突き刺して、まどろみの術から逃れ、
美しい若い女性が、藩主の部屋に入っていくのを見た。
彼女は他に、庭の池の鯉を手掴かみで喰い荒らしたり、
部屋では行灯(あんどん)の油を嘗め、障子に映るその影は、明らかに猫のものだった。
惣太の助けによって、血を吸われずにすんだ藩主は、回復に向かい、
惣太は「お豊」は吸血化け猫であると確信し、書状を預かったと偽って部屋に入り、
「お豊」を小刀で突き刺した。
しかし、女はヒラリと身をひるがえし、部屋の奥の槍を掴むと、惣太に襲い掛かった。
だが、これは勝てぬ、と感じた女は、眼をらんらんと光らせ、
口が耳もとまで裂けた化け猫の姿となって、屋根に登り、山へ逃げ込んだ。
その後も領民を苦しめたので、藩主は大規模な山狩りを行った。
これで、妖怪は退治されたが、鍋島家はいつまでも警戒をとかなかったという。
藩主はこの騒動の後、又一郎とその母を手厚く葬ったという。
この妖猫が最後に発見されたのは、1929年のことである。
出身
日本 肥前 佐賀県
出典
●『吸血鬼の事典』 マシュ−・バンソン 松田和也 訳 青土社
●『幻想世界の住人たち「〈日本編〉』 多田克己著 新紀元社
●『大妖怪伝説』 中岡俊哉 二見書房