拾「…べきなのか」

 

 

いったいどうしたものか。

まず誰にとでもない質問をしてみちゃうか。

僕がこれを落とせば、無数の人間もすべてのモノを落とす。

そして、僕は普通に生活していては得る事のできないチャンスを拾うのだ。

今まで迷惑をかけた両親に親孝行ができる。

世話になった友人たちに恩返しができる。

で、みんなだったらやるでしょ?

ボタン一個押せば、僕は薔薇色。

下界もある意味薔薇色だよね。

だってさ、だってだよ。

あの時のままでは、僕はただの【紫と灰色の混じった人生】のドリフターだ。

 

お守りとして持ってきたこの黒い刃のナイフ。

ゲームセンターのトイレで女子高生を強姦した時、僕はもう一生【カラス】でありたいと思った。

ナイフで制服を破っている時、俺は「略奪カラス」となっていた。

行為が終わった後だって、ルーズソックスや学校カバンなんかをナイフで破って遊んでたっけ。

死体を弄ぶスカヴェンジャー♪って音楽、どこかで聞いたよな。

さんざん犯した女子高生にそっとポケットの中のキャラメルをひと粒手渡すと、女子高生はなぜか微笑んだ。

ああ、どうなってるんだろう、僕のいるコノクニ、コノセカイ。

 

マリファナはよく、ゲームセンターに来るイラン人から購入した。

種入りで5千円、そんなもんだろう。

実は今現在もマリファナのフラッシュバックがやってきている。

そして僕は今、名前も覚えていないこの空を飛ぶ機械に乗っているんだ。

ある国のある町に落とす為にね。

今は空でノホホンとしているわけだが、考える事はこんな空にいながらもミクロな事だ。

言語化する価値もないくらいの、生理的嫌悪感を感じる単語だ。

西暦が2000を越えてからというもの、僕の同年代や1個2個年令が上の先輩たちがまわりからいなくなっていった。

国は「不良少年抹消法」を考えたようだ。

バイト先の店長を刺して殺しかけた後輩は、いまどこかで大好きな銃をぶっぱなしているか、蜂の巣になっているかだろう。ミリタリーマニアだったからなぁ。

めったに見ないニュースで見たんだけど、アゼルバイジャンの少年院が今はからっぽらしい。

僕達の国で作られた「不良少年抹消法」は他の国でも実施され始めているんだ。

いいねぇ、不良→英雄になれるんだから。

国はいい事考えたね。

 

そういやあ、ゲームソフト全部親に売られてたな。

殴る気もしなかった。まあ、その分、また酔っぱらい親父を拉致ってきたけどね。4千円しかもってねぇんでやんの。

 

国はいい事考えたね。

僕みたいな悪い【大人=子供】は、戦場で遊んでこいって事だもんね。

ああ、もう落としていいかなぁ。

ほんとにいいのかなぁ、なんも知らないでいるんだぜ。こいつら。

国同士が戦争とかじゃないんだぜ。僕達の国が楽しんで無差別にやってるんだぜ。あひゃはぁ、テレビもろくに持ってない家がある国なのによ。かわいそ。

国取りアメーバ作戦って隊の誰かが言ってたけど、意味がわからない。

アメーバって何よ、ひどい作戦ってことか?

 

さて、落とすよーー。

僕もこんなもの早く捨てて、カエリタイんだ。

どこにもカエレナイんだけどね。

また、別のとこで同じ事するんだ。

でも、親には見た事もないほどの金がいくって聞いた。

なのに俺はまた別の国に行くんだ。

これを落しにね。

いいか、まだいいか。

これでも読むよ。

飛び立つ前に親から送られてきた手紙だ。

初めてあける。

 

 

『最後の手紙』

作・あなたの母親

 

あなたを産んで良かったと思います。

あの人はあなたを憎んでいた。

でも、父親なのよ。

あなたは道を選んで自分でいける子だと思っていたの。

でも、あなたの道はライトで照らしたって一寸先さえ見えない道でした。

そしてあなたは壁にぶつかる事を恐れず闇雲に走った。

走る道はゆるやかでしたか?

きっとなんの障害も感じず走れたのでしょうね。

だけど、あなたの通った後の道を照らしてみた事はありますか?

あなたがよく使っていた言葉の「蟲」たちが潰れて死んでいるでしょう?

国があなたの出兵決定を報告してきたのは、あなただけでなく、私達の責任なのです。

この手紙が最後になります。

私達は先にこの世から去り、すべての記憶を捨てる事で安らぎを得ます。

あなたも命ある限り、生きて、この手紙を送った私達の心を無駄にしないで下さい。

心を無駄にして欲しくない為に、私達はあなたを捨てたのです。

つぐないなさい。

人としての心を最後まで捨てずに、つぐなって死になさい。

終わります。

 

 

僕は「あーあ」と声が出た。

本当は、少なからずとも考えていたんだ。

「・・・べきなのか」

とね。

つまり、僕はこの作戦を実行して金だけ持って帰るわけさ。

鬼畜だとか、悪魔だとか言われようが、僕は気にするわけはないが親はそうもいかない。

「・・・べきなのか」

「・・・」に何が入るのかはよく分からないが、とにかく悩んでいたんだよ。

もう意味がない。

つまりこういう事か。

僕を拾ってくれたこの国が、今は親・・・。

親には孝行しなくてはいけませんってか。

そりゃないぜ、セリョリータ。

セリョリータって誰だ?

それにしても、この国が親だとは、今の今まで考えてもいない盲点だったが、なるほど・・・どうりで僕は今、愛国心でいっぱいなわけだ。

僕はこの国のお陰で英雄になれるかもしれないんだもんな。

 

たった今、腕に刻んだよ、黒い刃のナイフで。

国のシンボルワード。

僕の黒い血がこの空の機械のボディと同じ色だ。

お父さん、お母さん、見えるかい?

僕の腕に刻まれた『肉』という字が。

 

 

 

 

続きませんが、肉の謎にそろそろ迫りませんとネ いっか別に