家では菊子が玄関で泣きながら正座をして待っていた。

「おい・・・どうした?」

菊子はただただ、泣くばかり。

「理由を言えよ。どうしたんだよ」

「友達が・・・死んじゃった・・・」

「・・・・・・・いつだよ?」

「さっき・・・」

俺は菊子の肩に手を置いた。

「そうか・・・」

「ずっと・・・昔からの親友だったの・・・」

「つらいな・・・・わかるよ・・・」

「わたしが小学校からの・・・ずっと・・・ひっひっ、親友だったのに・・・」

「・・・・・・・・・」

俺は嫌な予感がした。

すぐに俺は電話の受話器をあげた。

そして、震える手で番号を押した。

繋がらなかった。

 

 

その日のニュースで、俺の親友、音母康男が死んだ事を知った。

原因はガス爆発。

さっきの音は・・・遠くで康男の家が爆発した音だったのだ。

 

俺にとっての友達は・・・菊子にとっても友達なんだ。

尻同士だが。

 

 

俺は何もする気がないまま、2日間、ただぼーっとしていた。

何もする気が起きない。

やる気満々なのは、俺の肛門だ。

最近は自分である程度、大きさを調節できる。

小出しにする事もあれば、溜めて大きな音にする事もできる。

しかし、溜められるのはそう長い時間ではない。

長い時間我慢し過ぎると、後々に爆発的な衝撃を起こす。

自分の尻と、住居を守る為、溜めすぎはしないようにしている。

そんな時、激しくインターホンが鳴った。

 

 

中根だった。元・上司の。

真っ青な顔で、俺は何も聞かされず腕を引っ張られ、中根の車に乗せられた。

心配そうに見送る菊子。

車は走り続け、中根は何を聞いても「どうすりゃいい、どうすりゃいい」を独り言のように呟いているだけだ。

着いた場所は、あの高級マンションだった。

周りにパトカーや消防車、人込み、報道陣が集まっていた。

車からおりると、中根は俺の腕を引っ張り、警察に一言伝えて張り巡らされたロープをくぐって中に入る。

マンションの入り口部分は瓦礫の山だった。

上を見上げると、マンションの最上階が崩れ落ちてしまっている。

屋上がごっそりと削れて、最上階の部屋が剥き出しになっていた。

あそこは・・・浅香ラヴのいる階だ。

 

マンションの中に入ると、すぐにマネージャーが迎えに来た。

「お・・おまちしておりました!!」

「竹美くん!!頼む!!!頼むぞ!!」

中根はそういって、俺の肩を揺さぶり、頭をマネージャーに下げて外に出ていった。

「あの・・・何がどうなって・・」

「話は後です!!もう・・時間がないかもしれない・・すぐにラヴの部屋に!!!」

俺は彼女の部屋まで引っ張られるように連れて来られた。

マネージャーは俺に頭を下げる。

「救って・・救ってやってください・・・」

マネージャーはドアをあけると、俺を彼女の部屋に押し込んだ。

 

 

驚愕した。

この、俺の部屋の何倍もある広い部屋は・・・ラヴの体でうめ尽くされていた。

部屋の天井から上はない。

彼女の体がそこまで大きくなったのだ。

大きく膨張した彼女の体が部屋の隅々まで敷き詰められていたのだ。

 

その肉が流動して、彼女の顔らしき部分が移動している。

そこからラブらしき者の目が出てきた。

「た・・すけ・・て・・・」

「どうしたっていうんだ・・・これ・・・」

「出なかった・・・出なかったの・・・いくらポテト食べても・・・ゴボウたべても・・・お尻の穴を刺激しても・・・出ないのよう!!!!」

「屁がか!?」

「屁がよぉ」

俺はため息をついて、両手で頭を抱えた。

「体がでかくなったってだけで・・・鉄筋のマンションが壊れる?嘘だろ?」

欠陥マンションだったってわけだ。

それで中根も慌てているのか。

しかし、いくらなんでも人間の体が建物を破壊するなんて。

「マネージャーがやってくれたの」

「なんだって?」

「わたしの為に・・・この部屋から上を取り壊してくれたの。そうでなければ・・部屋から出る事ができなくなった私は・・・この部屋の中でグチャグチャになって死んでしまうと思ったのね。でも、実際そうなるところだったわ」

「狂ってる!!」

同時に怒りの屁が出た。

ブゴンッというけたたましい音が響いた。

「ああ・・・うらやましい」

「うるせぇ!!・・・あのなあ、なんでなんだよ!!どうして、出過ぎて死にたくなっている奴がいて、出ないで死にそうな奴がいるんだよ!!・・・・なんなんだよ・・・屁って・・・屁ってなんなんだあ!!」

ブゴンッブゴンッブゴンッブゴンッ!!

鳴れ!!鳴れよ!!もうみんな吹き飛ばしちまえ!!

こんな事はもういい!!

俺はもっとかっこいい人生を送りたかったんだ!!

こんなへんな病気になって・・・憧れのアイドルは・・・・せっかく知り合えても屁が邪魔をしやがる!!

マンションが嫌な音できしんだ。

ばきっという音がして、部屋の壁の中にあった支柱が突き出してきた。

彼女が膨張を再開したのだ。

「いや・・・痛い!!痛い!!」

壁から突き出た支柱が今にも彼女の膨らんだ腹に突き刺さりそうだ。

・・・・どうなる?

もし・・・ここまで巨大になった彼女から・・・いっぺんに屁が放出する事になったら・・・。

このマンションは・・・。

空には報道関係のヘリコプターの音が響く。

「いやあああ!!撮らないでぇ!!!!」

「馬鹿やろうが!!あ・・あ・・・・あいつら・・・・もし爆発したら・・・あんなヘリコプターなんか・・・吹き飛んじまうぞ・・・」

街が大災害になる!

 

きしむマンション。

叫ぶ浅香ラヴ。

ピンチを予知して鳴り続ける俺の尻。

俺の屁が次第に、崩壊へのカウントダウンに聞こえてきた。

 

 

 

 

続く