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 信じられなかった。

ミサキが死んだ!!

・・・・・最初は自殺かと思っていた。

体調(屁の病)が治ってもきっと家族との絆が修復できなかったんではないか。

それを思い悩んで、無理心中を。

しかし、違うと分かったのは俺が近所のラーメン屋『カニ魔王』で蟹風味タンタンメンを食べながら屁(ラーメンをすする音に消える程度の)をしている時だった。

「おやっさん、知ってるか?あの前のガス爆発の事」

「ああ、家族全員死んだってな。いや、恐いね」

「違うよ、ガス爆発の原因だよ」

「事故じゃないの?それともやっぱ・・・一家心中かい?」

「それがな、爆発のあった家のガスの元を調べたら、原因は家のガス漏れとかが原因じゃねぇんだよ」

「・・・すげえ、ガス臭かったって話じゃない、他の原因があるのかい?まさか・・・爆弾魔・・」

「違うって。確かに、家のガス元も爆発を手伝ったろうさ。ただ原因は違う。よくわかんねぇんだけどもよ、娘さんいたろ、あの家」

「いたっけ?ああ、あの中学生か小学生か・・・いやいや、幼稚園児だっけか?」

「まあ、いたんだよ。それでな、娘さんの遺体が一番ひどい損傷を受けていたらしいんだよ」

俺は耳を塞ぎたくなった。

食事中だからとかの理由ではない。

その娘がミサキの事だと思ったからだ。多分間違いないだろう。

妹がいるなんて聞かなかったしな。

「娘さんよ、腹が破けてたんだってよ」

「・・・・他のお客さんがいるんだよ、少し小声で話せよ」

「なんでもな、その娘さんの遺体からが一番すごい臭いがしたっていうんだよ。ガスのな。で、娘さんの遺体だけ念入りな解剖が必要だって考えて、もってかれたんだけどな・・・」

「ごくり」

「解剖手術をしていたヤツら・・・全員死んじまったっていうんだよ・・・ガスが原因で」

ラーメン屋の店長は呆れた顔をした。

「なんだよ、そりゃ作り話だよ」

「おい、本当の話だぞ!俺はちゃんと・・・」

「『タタカツ屋』のよっぱらい店長から聞いたんだろ?あいつは昔から酒の勢いに任せてそんな事ばっかりいうんだ。第一そんな事あったらまっ先にテレビで騒ぐだろ?」

「信じねぇなら直接聞いてみろよ!あいつ、すげー詳しいんだぜ!」

 

そこまで聞いていた俺は、ラーメン代をテーブルに置くと『タタカツ屋』に向かっていた。

 

 

『タタカツ屋』は居酒屋だが、ここは酒の好きな人間が来るだけじゃない。

ここの店長の鈴木宗男はいろいろなホラ話しをどこからかもってきて、みんなに聞かせるのが好きだった。

それが目的で来る若者も多い。

今はまだ店は準備中だった。

しばらくどうしようか店の前で考えていると、黒い和服を着た男が店の前にやってきた。

しばらく俺の顔を黙ってみていたが、興味なさげに店の中に入っていった。

誰だろう。ここは店長一人で他の店員はいないはずだ。俺も何度かは康男の付き合いで入っているから知っている。

俺は少し考えて、その店ののれんをめくって入った。

 

「なに?」

太った男がカウンターの中で、眉間にしわを寄せて不機嫌そうに言った。

「いや・・あの」

「準備中だって書いてあったでしょ。ルールは守ってよ、もー」

「すいません」

俺は頭を何度も下げた。

「まあいいじゃないか。別に準備する事なんてないんだろう?」

そう言ったのは先ほど店に入っていった和服の男だ。カウンターの椅子に座ってキセルをふかしている。

「あるんだよ、準備。今日もスッポコペロンのアギアギ・・」

「宗男君、その先はここでは言ってはまずいよ・・・。ああ、君、酒を飲むならカウンターでもどこでも好きなところに座りたまえ」

和服の男がそういうので俺は適当なテーブルを選んでそこで座った。

「むぅ?」

和服の男は俺の下半身を見た。

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・なんですか・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・ちょっ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・あの・・・・・いや・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・(汗)・・・・・・・・・(汗)・・・・・・・・・・(汗)・・・・」

「・・・・・・・君、屁かい?」

「は?」

「屁なんだろう!!!?」

突然俺を指差して男は大声で言った。俺はびっくりして我慢していたものを放出した。

小さな爆発に近い音が俺の尻から鳴る。

「ぬっ!!」

和服の男は鼻もとを手でおさえ、険しい表情で退いた。

「もう!!どこでしてんのさ!!もう!!怒るよ!!」

店長はフライパンを使ってあおぎ出した。

 

どうやらラーメン屋で聞いた話は、この和服の男がタタカツ屋の店長に話した事だったらしい。

それをタタカツ店長はみんなに喋っていたのだ。

和服の男は境骨(きょうこつ)という名で、近くの水城寺の住職だった。

住職と言う割には、髪の毛がシルバーである。見た目も若い。

境骨は、最近、屁の研究をしているのだと言う。

昔の随筆や落語に出てくる屁の話を集め、屁に関する蔵書だけで大変な数を所蔵しているという。屁に関する書は、日本人が一番豊かな心を持っていた時に多く世に出たものだという。

屁は豊かな心の表れであり、放屁する者される者、この関係は人類が永遠に続ける事になる放出と吸収の螺旋(スパイラル)なのだと言う。

最近、境骨は屁のメカニズムについて人類初であろう発見をしたらしいのだ。

 どうやらそれが先ほど出てきた『スッポコペロンのアギアギ』なのだそうだ。

屁のメカニズム。

それは腸内の空気や残留物が醗酵してどうの・・ということではないらしく、なにやらすごく複雑でいろいろな意味を持っているものらしい。

人類の永遠のスパイラルがこの『スッポコペロンのアギアギ』にあるようなのだ。

俺は『人間と屁が現在どういう関係の状態』にあるのかをこうして知ったのだった。

それは、確かに『スッポコペロンのアギアギ』だった。

 

続く


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