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 俺はおどろいて放屁した直後、すぐに部屋を出た。

知らない女が部屋で座っていたからだ。

きっと部屋を間違えたのだろう。

しかし、どうやら部屋は俺の部屋だ。

俺はもう一度入ってみる。

チャイナ服の女が座っている。

髪型はショートカットで、顔は童顔、化粧が濃いがかなりかわいい。

しかし、あんたは誰だ?

「はじめまして・・・って言ってよいのかしら」

「は?・・・って間違えてません?ここ、おれの屁屋ですよ・・・。なんか臭いっしょ?」

彼女はニコッと微笑むと首を横に振った。

「わたし、臭い?」

いや、俺が聞いてるんだよ。

「あたしの息、くさい?」

「は?」

チャイナ服の彼女は立ち上がって俺の前まで来た。

「わたしね、あなたのお尻の精なの」

俺は突然腹が立ってきた。

この女はきっと俺の噂を聞いて、からかいにやってきたのだ。

「あ、怒らないで、怒りは体によくないわ。あなた、ただでさえ最近タバコの量も増えたし、夜更かししているじゃない。ね、だから怒っちゃイヤ。体、いたわって」

何者だ、この女。

俺の私生活を何で知っているんだ?

確かに最近生活が更に乱れてきた。ストレスのせいか寝れないからだ。

「ねえ、ここ見て」

彼女は自分の顔の口元にある三つのほくろを指差した。

「これ、あなたのお尻にもあるでしょ?」

あるとも。肛門近くに三つある。ちゃんと鏡で確認済みだ。

・・・なんで俺の尻事情を知っている?

まさか・・・。

「さっきもいったけど私はあなたのお尻の精。私が病気の為にあなたに迷惑かけちゃってますね」

俺はあまりの事に36連発の屁が出た。

アフリカの民族が使っている楽器のような音が出た。

「ごめん、またくしゃみでちゃった、てへ」

「くしゃみ?」

「あ・・・また・・・・ごめん!出る!」

彼女が謝って直後、俺の尻が嘶いた。

「はあ、いい加減、治らないかしら、私の風邪」

「お前は俺の尻でくしゃみするんかい!!」

「ええ、そうよ」

微笑まれてしまった。

俺の屁の出るタイミングは最近俺でさえも分からない時が多い。

それなのに、彼女は俺の放屁直前に宣告した。

「お前・・・本当に・・・」

「そうだってば。まだ信じられない?ならあなたの好きなアダルトビデオのタイトル言おうか?えっと『ナデシコ・ハメっ子動物』それと、『くえっくえっくえっチョコボール向井 パート3』、それと『奥様、こん・・・」

「やめてくれ!!」

「わかってくれた?」

「・・・・・」

人生何があるかわからないものだ。俺は自分の尻の精と出会ってしまった。

ある日、突然にだ。

なんて運命の持ち主だ。素晴らしい。もうヤケだ。

彼女は腕を後ろに組みながらニコニコ俺を見ている。

尻の精ながらもかわいい。なぜか俺は頬を赤らめる。

「なんだよ」

「お風呂にする?御飯にする?」

「おい、なにいってんだ?」

「え、日本語よ」

「く・・・」

「どっち?」

「ここに居座る気か?」

「何いってんの、うまれてずーーっとあなたと一緒だったのよ。お母さん、あなたが悪い事するとすぐ私のホッペを布団叩きで叩くのよね、痛かったわ」

「まじでかよ・・・・」

「こうして顔をあわせる事はできないけど、あなた・・たまに鏡で私の顔見てくれるよね」

「あーーー、わかったわかった!」

「お風呂、御飯どっちで・す・か?」

「じゃ・・・じゃあ・・・飯」

彼女は鼻歌を歌いながら狭いキッチンに立って何やら作り始めた。

「料理はね、あなたが寝ている間に勉強しているのよ」

どうやって勉強しているのかはなぜか聞きたくなかった。

 

 

「うめえ・・・・」

俺は感動した。

うちにある材料でこんなにうまい飯ができるのか。

彼女は嬉しそうだ。

「なんだか、嬉しいな」

首をすくめるようにして彼女は顔全体で笑顔を表現した。

なんか・・・ちょっといいな。

よく見れば、ミニのチャイナ服着てるかわいい女の子が俺の部屋にいるんだぞ。

俺はこの屁を切っ掛けにかなりおいしい思いをしているんじゃないか?

・・・・でも元凶はこいつだって事だよな。言ってる事が事実なら。

ちなみに俺は食事中に屁が出るのはもう気にならないが、彼女も全然気にしていないどころか、いちいち謝るのだ。私のくしゃみだとか言ってたものな。なんだか、彼女の言葉がますます本当の事のように感じてきた。

「テレビつけていい?」

「あ、ああ、いいよ」

彼女がテレビのスイッチを入れると、ちょうど爆弾魔のニュースを報じていた。

「最近、多いんだよ、連続爆弾魔」

彼女はくいいるようにテレビの画面を見ている。

「かわいそうに・・・」

「だよな、無関係っぽい人まで巻き込んでるみたいだしな」

「・・・・かわいそう・・・本当に」

彼女は涙で目を潤わせている。

俺の尻の精は、飯も上手いしかわいいし、スタイルもいいし、心まで優しいのか。

ん?これって付き合ってる事になるのかな。

まあ、恋愛感情が彼女にあるかはともかく、俺と一心同体って事だろ?

・・・・って俺が彼女のペースに巻き込まれてるな。

ほんとのところどうなんだろう。

「なあ、名前なんていうの?」

「私?私はね、アナ・・」

「ちょっと待て!!・・・う・・・うんと・・・き・・菊子って呼んでいいか?」

「なにそれ、ださくない?」

「俺の好きな名前なんだ、いいだろ?」

「ええ・・・まあいいけど」

あまりストレートな名前は聞きたくない。

 

翌日の夕方、康男が遊びに来た。

康男はくやしがった。

そりゃあ、ミサキといい、菊子といい、俺がかわいい子ばかりつれているからな。

「カズキさんのお友達?どうもよろしくー」

「あ、ども俺、音母康男です、こいつとは同じ学校で」

「ええ、よく知ってますよ、小学校の時『カンチョー魔』ってよばれてたでしょ?あなたの特技だったものね。もう私もびっくりしちゃ・・むぐぐ」

「ところで康男、飯まだだろ、一緒に食おうぜ、な」

不思議そうな表情の康男。俺が菊子の口を慌てて塞いだからだ。

「なんで俺の特技を・・」

「だから俺が話したんだよ、飯食ってけよ」

 

テーブルの上に並んだ豪華な食事を前に、康男は溜め息をもらした。

「カズキ・・・憎らしいぞ・・」

俺は屁で応えてやった。

思えば康男も食事時の屁は最初はかなり怒ったが、今では何も言わない。

菊子がサラダを作っている時、康男はぼそっと俺に言ってきた。

「屁の事なんもいわねぇの?それとも彼女もミサキちゃんみたいに」

「ち・・違うよ、あいつは屁は一発もしない、それに付き合っているわけじゃないんだ。わけあって居候しているというか・・」

「なんの話してるんですかぁ?」

菊子はサラダを持ってニコッと微笑んだ。

「ねぇ、名前なんていうの?」

突然なれなれしくなったぞ、康男。付き合っていないから遠慮なしモードかい。

「いってなかったでしたっけ?私、アヌ・・」

「ちょっと待て!!お前最初・・・ってそういう事か・・俺はてっきり穴のアナかと・・」

「え?なんだよ、カズキ」

「いや、いやいやいやいやいやいや・・菊子、菊子っていうんだ、こいつ」

「名字は?」

「名字はカズキさんと一緒です」

「え?どういう事?」

「いや、実はいとこなんだよ。いとこ。」

「おお、納得、しかし、カズキのいとこがこんなにかわいいとは・・・」

俺はおもいきり臭いやつをかがせてやろうと腰を上げた。

その時、外で大きな爆発音がした。

「な・・なんだ!!?」

康男は窓に走った。

暗くなり始めた空を、赤い火の舌がちろちろと舐めている。

近所が火事だ。

「爆弾魔だ!とうとうここにも来たか!」

康男は興奮気味に叫んだ。

俺も興奮の余り屁が止め処なく発射される。

最近は尻に何らかの摩擦でも生じるのだろうか、熱さを感じていたのだが、今のは一際焼けるように熱かった。

 

 

翌日、昨晩の爆発事件でミサキの家が爆発し、ミサキと彼女の家族全員の死亡を知った。

 

 

 

 

続く


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