兵主部
読み=【ヒョウスベ】
スペル=【】
別名
ひやうすべり、、ヒュ−スンボ、ヒューヒューサン、ヒョイヒョイドン、兵主、ひょうすえ、兵主(ひょうすえ)、兵揃(ひょうすえ)、水神(ひょうすべ)、ヒョ−スケ坊、ヒョ−スヘ、ヒョ−スベ、ヒョウスボ、ヒョ−スボ、ひょうすぼう。ヒョ−ス坊、ヒョ−スボドン、ひょうすんぼ、ヒョウボウ、ヒョウ坊、ヒョスボウ、ホイホイサン、ホイホイ鳥、ホイホイドン
種別=【河童、水神、武神】
使用する力
熱病(おそらくマラリア)、笑いにつられて笑うと死ぬ、水難事故、相撲、爪、風の神を操る
持ち物=【なし】
出身
佐賀県杵島郡、長崎県、熊本県、宮崎県宮崎市丸山町、宮崎県宮崎市外蟹町、宮崎県児湯郡都農、宮崎県西臼杵郡上野村、宮崎県一山村耳川
筑前から南九州でいう「河童」の一種、または「河童」そのもの。
「水神」や「武神」を祀る「兵主部神社」が多数存在する。
「兵主部」の「部=べ」は、別名である「ヒョウスボウ」の「ボウ=坊」であり、「河童」の「童」と同じ役割で、「坊」が訛って「べ=部」になったといわれる。
姿を見た者は原因不明の熱病になり、その病人を見舞った人も病気になるといわれる。
なにか空気感染性の高い病気を持っていたのであろうか?
これは、おそらく、マラリアではないであろうか?
似たような事をする妖怪に、
「瘧鬼(ぎゃくき)」という、マラリアを感染させる者がいて、猿の鬼だともいわれている。
猿から、エイズなどの伝染病が流行ったが、この妖怪の起源は中国であり、また下記してあるが
「兵主部」も起源は中国である。
そしてさらに、あまりつながりはないかもしれないが、鳥になるとも、河童の一種ともいわれており、「山童」や「兵主部」の種類に「ホイホイ鳥」というのが存在する。
また、恐ろしい事に、奇声を発して笑うといわれ、これを聞いた者がつられて笑い顔をすると死ぬという。
他にも、水難事故なども起こすという。
石を投げ付けたり、鉄砲を撃って攻撃しても、命中したとしても、その死骸を見たものはいないという。
外見は猿のようで、体毛に覆われていて、風呂に入ると、風呂の一面に毛が大量に浮くという。
これに対しておもしろい話もあり、それも下記した。
宮崎県では彼らは、数々の民話を残している。
「ヒョウスボウ」「ヒョウスンボ」「ヒョスボウ」などと呼び、これは夏の間は川にいて、秋になると「ヒョウ、ヒョウ」と鳴きながら山に入り、鳥のように跳ね飛び回る。
これを遮ると必ず死んでしまうという。
なんでも、この音からこの名称が付いたともいわれている。
同じく「河童」の種類で、「セコ」というのがいるが、これも「ヒョウヒョウ」と鳴くという。
日向(宮崎県)や薩摩(鹿児島県)では、水神に奉るといって、田畑の隅に、ひとかまばかりの稲を残す風習がある。
すると夜「兵主部」がでてきて、その稲を集めたり、落ち穂を拾ったりするといわれる。
宮崎県宮崎市丸山町の薬湯屋に毎晩夜遅くこの「河童」が、湯を浴びに来た。
「河童」が使った後の風呂は、毛がたくさん浮いていて臭くなる。
主人がたまりかねて湯を落としておくと、馬が殺されたという。
また、同じく宮崎県で、この「河童」の子供を産んだ後家がいた。
臨月に産婆がいくと、たくさんの川魚をを入れた篭がすえてあった。(兵揃のすえと、関係あるのか?)
たくさん生まれたが、皆姿を消し、篭も消えていたという。
さらに同じく宮崎県の外蟹町では、これに相撲を挑まれ、前身を爪で引っ掻かれたという。
生態は昼は、川の中に隠れ、夜になると人に害をなす。
佐賀県杵島郡(武雄市)橘村の潮見神社は、「河童」の主人である「渋江氏」を祀っているが、その祖先に「兵部大輔(だいふ)島田丸」というのがいて、内匠(たくみ)の奉行をつとめていた。
当時、内匠工が人形を作って秘密を守り、春日社の大工事を成就したが、それが完成した時に人形を川に捨てた。
その人形が「河童」となって人に害をなし、それを鎮めたのは島田丸で、それ以降「河童」を「兵主部(ひょうすべ)」と呼んだという。
佐賀県などでは河童は大工の弟子でもあるといっている。
また、こんな水難除けの歌もある。
「ヒョウスベよ 約束せしを忘れるなよ 川立男氏も菅原」
(この菅原とは「菅原道真」のことで、下記に記してある事を参照していただきたい。)
そして、難を避ける為に、大工の墨打ち(墨壺)する器の糸を貰い受けて、子共の足にまとう習慣がある。
また、人助けをしたという話もあり、
川の堤防が壊れた時、身を持って田畑を洪水から守ったという。
また、宮崎県の伝説に戻して記す。
宮崎県児湯郡都農では、この河童の腕はもともと猿のもので、猿が欺いて変えたのだという。
河童は常に仇を返そうとするので、猿回しなどは川を渡る時には、猿に目隠しをするという。
近年に騒がれている「河童の手のミイラ」などは、猿である事もしばしばである事が頷けてしまう話である。
また「兵主部」はこの事があってか、復讐したいものの猿が苦手で、猿に出会うと硬直してしまうという。
河童の相撲伝説の起源は実は「兵主部」にあった。
日本で最初に相撲というものが行われたのが、実は奈良県桜井市にある「兵主部神社」なのである。
「兵主部」が武神として祀られているのだから、当然の事かもしれない。
よって、この近くには後に、相撲神社が建てられた。
また、この相撲神社の分社が東京両国の「すくね神社」である。
「すくね」とは最初の相撲の時の勝者、「野見すくね(のみのすくね)」のことである。
「野見すくね」は相撲に勝った事から、垂二天皇の仕える事になる。
この時「すくね」のした事は、埴輪(はにわ)の製造である。
「宿]」は皇族の葬儀の際に、大勢の殉死者を出す事をやめて、埴輪に代える事を提案したのである。
これによって彼は、「土師連(はしべのむろじ)」と改名する。
埴輪を焼いていた竈は後に鉄の溶鉱炉に応用されていった。
後に「すくね」の家来土師氏は鉄の製造にも従事するようになり、勢力を持っていった。
その子孫の中でも最も有名なものが「菅原道真(すがわらみちざね)」である。
彼の曾祖父までは土師氏を名乗っていたが、役職の関係上、改名したのである。
「道真」を祀っている太宰府天満宮では、「兵主部」が祀られている。
日本での「兵主部」信仰は「すくね」の時代から、鉄製造を行う氏族を中心に浸透していったのである。
「兵主部」はもともと「兵主」という中国の武神で、このモデルはなんとあの、「黄帝」の難敵、巨人族の王、「蚩尤(しゆう)」であるという。
この妖王は兵の主、「武神」として祀られ、
鉄を喰い、恐ろしいまでの力を持っていたといわれている。
鉄を喰うというのは、鉄を製造する漢族ではない異民族を表したものであるらしい。
この「兵主」が日本に伝わったのは、飛鳥時代以前、秦の始皇帝を祖とする渡来豪族、秦氏(はたし)によるといわれている。
「蚩尤」である「兵主」は、日本では、水の神としても祀られていた。
これは鉄製造と関係があって、鉄を作る為にはまず、鉱脈を探し出さなければならない。
この技術は水脈を捜す技術とほとんど変わらないという。
だから「河童」が「兵主部」といわれ、水の中に棲んでいたり、秋になって「山童(やまわろ)」となって山に入っていくのは、鉱脈を捜す為に山に入り、水脈を探し当てて水に入るという、「兵主」の伝来から来ているといわれる。
実際、「兵主部神社」のあるところの地名は、鉄製造に関連した、「穴師(あなじ)」とついているところが数多くあるという。
「アナジ」という風の妖怪も存在するが、これは鉄製造の際に大量の風を使うので、それぐらいすごい風の妖怪だという事で、ついた名前だという。
武器製造の神として祀られていた「兵主部」も風の神を操っていたという。
鳥山石燕の『図画百鬼夜行』では、つるつる頭で、大きな口としわだらけの顔。
猿のような体を持っている。
上記を見ると、案外恐ろしい妖怪なので、「河童」らしくは描かれていない。
よくみると、手足に水掻きのようなものが存在していないのである。
『百鬼夜行絵巻』では「ひやうすべり」と書かれ、コミカルに描かれており、禿げた頭に肉のたるんだ毛だらけの体を持つ。
また、両手首には、腕輪を付けている。
これは、神格であった名残りだろうか?
水木しげる先生の描くこの妖怪は、河童というよりも、人面猿のようで、その顔は牙を生やし、目は、一定方向を定めておらず狂気の瞳である。
丸坊主で、少量の鬚を生やしている。
また、両手には、魚をぶら下げている。
先生の著書に、面白い大解剖図が描かれている。
ここでは、この妖怪は川の中の横穴に住んでいる。
まず皮膚は「ひょう皮」といって、ゴム状で、撃たれても平気である。
あと、酔っぱらっているかのようにふらふら歩くのは、骨組みがねじれたようになっているからだという。
頭の中には、神通力神経があり、人間が近付くと、神経無線によってすぐ感知できるという。
また、頭が大きい割には、脳は小さいという。
体の内部には、「ひょうすえら」というものがあり、水陸両用のえらである。
酸素袋もあり、非常時の為にここに酸素をためておくという。
胃も落ち穂を消化する胃と、魚を消化する胃の二つがある。
また、例の病気はこの体内で作られる、「ひょうす菌」によるものだといわれている。
創作のものであるが、実際にこれに近いものなのかもしれない。
登場作品
『ONI 鬼忍降魔録』(ゲームボーイ)
「河童」の色違いとして登場する。
得に強くはない。
出典
『怪 第参号 夏期特大号 ネイティブ・アメリカン』 水木しげる/荒俣宏/京極夏彦/宮部みゆき/小松和彦/足立倫行/ジョ−ゼフ・キャンベル 角川書店
『鬼太郎なんでも入門』 水木しげる/著 小学館
『幻想世界の住人たち「〈日本編〉』 多田克己/著 新紀元社
『幻想動物事典』 草野巧/著 シブヤユウジ/画 新紀元社
『山東民譚集』 柳田国男
『水虎録語』
『図画百鬼夜行』 鳥山石燕
『図説日本未確認生物事典』 笹間良彦/著 柏書房
『図説 日本妖怪大全』 水木しげる 講談社+α文庫
『世界の妖怪全百科(オールひゃっか)』 監修/聖咲奇 小学館
『全国妖怪事典』 千葉幹夫/編 小学館ライブラリー
『綜合日本民俗語彙』 柳田国男/監修 民俗学研究所/編 平凡社
『高千穂』 熊本商科大学民俗学会
『日本の妖怪 別册太陽』 谷川健一/監修 平凡社
『日本妖怪図鑑』 佐藤有文 立風書房
『水木しげる妖怪大画報』 金田益実/構成 講談社
『妖怪おもしろ大図解』 水木しげる 小学館
『妖怪画談』 水木しげる/著 岩波新書
『妖怪クイズ百科じてん』 水木しげる/著 小学館
『妖怪大図鑑』 佐藤有文/著 小学館
『RPG幻想事典 逆引きモンスターガイド 東洋編』 ヘッドルーム/編著
『ONI 鬼忍降魔録』(ゲームボーイ)