ベルゼブブ

読み=【ベルゼブブ】

スペル=【Beelzebub、Baal-Zebub】

別名=【悪魔の天使長、悪霊の頭(あくりょうのかしら)、死の神、バアル・ぜブブ、バール・ゼブブ、バアル・ゼブル、蠅の王(はえのおう)、ビールゼバブ、ベエルゼブブ、ベールゼブブ、ベルゼバブ、ベルゼブル、霊魂を導くもの】

種別=【悪魔、魔王、虫、蠅、神】

使用する力=【犯罪者をつくる、憑く、伝染病、スパイ】

持ち物=【】

出身=【イスラエル】

 

蠅の王。フェリステアのエクロンの神。

七つの大罪」では、暴食、または羨望を象徴する悪魔。

人間の自尊心に訴えかけて、罪を起こさせるという。

この悪魔の対応する惑星は、水星。真の特性は、向上心で、ベルゼブブが担当する心である。

その飛翔に象徴される向上心で、「ヤハウェ」側ではそれは、羨望であるとして執拗に批判している。

 

悪魔や魔神の多くは、中世以降の妄想たくましい、聖職者や、学者、迷信好きの庶民らによって生み出されているが、この蠅の神は、古く、由緒正しい。

『マタイ福音書』や『ルカ福音書』では、「イエス・キリスト」その人が、パリサイ派から「悪霊の頭ベルゼブブ」の力によって、悪魔祓いを行う者と批難されている。

ベルゼブブは、下級の悪霊を追い払う事ができたのである。

ルシファー」に継ぐ高い地位を持っているといい、「ルシファー」としても、このベルゼブブという実力者を味方にする事が、反乱の必須条件であった。

彼は「悪魔の天使長」の異名を持ち、「ルシファー」率いる6副官の一人の第二副官。

ベルゼブブは「」はもちろんの事、他の虫や、鳥など、空を飛ぶものの頂点に立つ存在であった。

創世記戦争では、空軍を率いて、天使軍と空中戦を繰り広げている。

しかし敗北後、水星に逃げたが、あの動きの早い惑星に到達できたのは彼だけであった。

(地球上で最も早く動ける生物は、蠅の仲間であるという)

 

昔、「(はえ)」の媒介による疫病を防ぐ為に、中近東の人々は、ベルゼブブを「蠅の王(はえのおう)」として尊敬し、魔王とも呼び恐れた。

イスラエルの王「アハジャ」は、使者を遣わして、自分の病気が治るかどうか訪ねさせた。

ベルゼブブはシリアやカナンの神が、ユダヤ・キリスト教の中で悪魔に編入された者で、カナン人や、フェニキア人の神、「バアル・ゼブル(神が住まう所の王、天国の王)」が、悪霊化したもので、ペリシテ人の予言神だった。

ペリシテのエクロンにあるベルゼブブ神殿では、獣を生け贄にして、そのまま放置し、それにたかる蠅の様子を観察して未来を占っていたという。

 

この「蠅の王」が地獄界で有力な地位を保ち続ける事ができた理由の一つは、福音書作家の記述に求められる。

ベルゼブブはキリストの時代以降も、ずっと人に取り憑いて悩ませてきたらしい。

フランス国王の最初の顧問官「ロアイエ」によれば、悪魔憑きにかかった婦人の悪魔祓いをした所、口から、蠅の姿をしたベルゼブブが飛び出したという。

『魔法』の著者のカート・セグリマンによると、ベルゼブブは地獄界で大いにに幅をきかせている「蠅魔」のボスで、他の蠅魔どもを産んだという。他に忠実な部下には、「メフィストフェレス」がいるという。

 

ベルゼブブは悪魔との契約の際に、召喚の対象になる主要な悪魔の一人であり、「魔女」を支配する主要な悪魔の一人でもある。

サバトにおいて、魔女は、「ベルゼブブの名において」キリスト教を否定するという。

この蠅の王の名は、恐怖と共に欧米のキリスト教信奉者の無意識に刻み込まれており、「ベルゼブブ」憑きの報告例は、20世紀まで続いている。

 

ベルゼブブは「蠅の王」として、実際には、「プシュ−コポンポス=霊魂の導き手(プシュ−コポンプとも)」、あるいは魂の支配者であった。

こうした称号を持っているにも関わらず、12使徒の中の3人によって、「悪の化身」「混沌の王」「デーモンの首領」であると主張された。

ベルゼブル」などとも呼ばれているが、この「ゼブル」は、「王子」を意味するが、ヘブライの書記が、悪意ある曲解によって、「ゼブル=ゼベル」、すなわち「糞」に置き換えたという。

ここにも糞にたかる蠅というイメージのルーツがあるのであろう。

 

また、この悪魔は、フランスのジャック・カゾットの小説『悪魔の恋』に登場し、美女「ビヨンデッタ」に変身して主人公を誘惑している。

この作者は、オカルト知識は持っていたものの、ベルゼブブと女悪魔「グレモリ−」を取り違えて書いてしまった。

もしくは、「グレモリー」がそれほど有名じゃない為、あえてベルゼブブにしたのかもしれない。

ちなみにカゾットは、フランス革命の際に、国王ルイ16世の逃走を助けたとして、ギロチンで断首刑となった。

 

ベルゼブブの容姿は巨大な「蠅」のような姿であるが、「蠅」そのものではない。

無表情な眼球を持っていて、顎の牙も鋭い。

そして、羽には海賊船の旗などに描かれる、どくろのマークが付いている。

 

ある国の王が「蠅」に軍事機密の話を聞かれてしまったので、その「蠅」を斬り付けると、片脚だけが切れた。

まもなく、片足の男が軍事機密を敵国に知らせたという情報が伝わり、きっと「ベルゼブブ」の仕業に違いないといわれたという。

 

また、神たちの間では、ベルゼブブを第一等の敵としており、聖書にも、数多く罵倒されている。

例えば『マタイ伝』10章25節には、

「弟子がその師のように、また、しもべがその主人のように苦しめられるならば、それで満足するべきである。

もし家の主人がベルゼブルと呼ばれたならば、その家の者たちが悪くいわれるのは当然ではないか」

また12章24節には

「ファリサイ派の人々はこれを聞いて、『悪魔の頭ベルゼブルによるのでなければ、この人に悪魔を追い出せるはずがない』と言った」

とあり、『マルコ伝』3章22節には、

「『イエスはベルゼブルにとりつかれている』と言い、また『悪霊の頭によって悪霊を追い出すのだ』とも言った」とある。

『ルカ伝』11章15節には

「イエスが悪魔を追い出すのは、悪魔の頭ベルゼブルによるものだ」とある。

 

「蠅」については、別項を参照されたい。

登場作品

『蠅の王』(小説)

ゴールディングの作品。

悪魔の名前はあからさまには登場しないが、『蠅の王』(1954年)では、主人公の少年たちの暴力をそそのかす悪の存在として書かれている。

自尊心に訴えかけて犯罪者を作るという特性を生かしたものだろう。 

出典

『悪魔・オカルト大全科』 竹内義和/編 秋田書店

『悪魔の恋』 ジャック・カゾット

『オリエント神話』 ジョン・グレイ

『神話・伝承事典 失われた女神たちの復権』 バーバラ・ウォ−カー著 山下主一郎主幹 青木義孝 栗山啓一 塚野千晶 中名生登美子 山下主一郎 共訳 大修館書房

『西洋魔物図鑑』 翔泳社 江口之隆

『世界神話辞典』 アーサー・コッテル著 左近司祥子 宮本啓一 瀬戸井厚子 伊藤克巳 山口拓夢 左近司彩子訳 柏書房

『天使の世界』 マルコム・ゴドウィン

『魔法』 カート・セグリマン

『妖鬼化(むじゃら)世界編《東ヨーロッパ・北ヨーロッパ・中国》 悪魔編』第七巻 水木しげる ソフトガレージ 

『妖怪世界編入門』 水木しげる著 小学館

『妖怪大全科』 左藤有文 秋田書店

『妖怪と精霊の事典』 ローズマリ・E・グィリ−著 松田幸雄訳 青土社 

 

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