
クトゥルー 魔界監視局
蠱毒
こどく
別名
●五通(ごつう)
●蠱(こ)
昆虫や動物の霊である。
ただ、相手を殺すだけではなく、呪い殺した者から財産を奪うこともできる恐ろしい術。
この「蠱毒(こどく)」をかける術者を「蠱主(こしゅ)」という。
最後に生き残ったものを「蠱(こ)」といい(蠱毒としてしまうところも多い)、
「蠱(こ)」という文字どおり、皿の上や器の中に大量の「諸蠱(しょこ)」といわれる、
「蜘蛛」や「百足」その他の毒虫類。
「蜥蜴(とかげ)」、「蛇」、「犬」、「猫」、「蛙(かえる)」、他、様々な小動物、
また、稀に大きな動物、そして、魚や鶏の肉などという非常に多彩な媒体を用いて、
互いに共食いをさせ、最後に生き残ったものを使役する。
この虫は、毒薬として使ってもいいし、「魂魄(こんぱく)」を人に取り付かせてもよいし、敵を喰わせてもいいし、黒焼きにして、粉にしたものを相手に振りまいてもいいし、
相手の家の床下に棲まわせ、原因不明の病気などで殺してもよい。
そして、「蠱毒」のためにこれらの媒体を飼うことを「蠱を飼う」という。
また、これらの虫などを端午の節句につかまえて、四ツ辻に埋めればよいともいう。
勝手に共食いをさせるためであろう。
『捜神記』によると、「蠱毒」の中には怪物がいて、「鬼(き)」のようではあるが、
様々な形を持ち、「蠱主」だけがその姿を知っている。
数ある「蠱毒」のなかで、もっとも凶悪な術が次のものを使役する方法である。
「猫鬼(びょうき)」である。
これは猫の「鬼(き=霊のこと)」で、ほかに「犬神」もこの一種である。
これについては、その項目を参照していただきたい。
他に蜘蛛を「蠱毒」の法で、使役した、例もある。
『夷堅志(いけんし)』という書物に記してある。
「李枢(りすう)」が旅の途中、一匹の大きな魚を羹(あつもの)と、
鮓(しおづけ)にして食べた。
しかし、なぜか苦くて味が妙だ。
彼は、解毒呪(げどくじゅ)をとなえて、その毒を防いで食べた。
後に鮓(しおづけ)を食べている時に、また同じ味がする。
そして、その魚を分解すると、中から小さな一匹の「青蜘蛛」がでてきた。
この犯人である「蠱主」はただ相手に蜘蛛を使役して終わったわけではなかった。
この「蠱主」は「青蜘蛛」やその他の虫によって相手を殺し、
その財産を奪って裕福となったが、
その虫たちは、「蠱主」の家に憑いて去らず、いずれは災厄にみまわれたという。
これはつまり、使役された虫が妖虫となり祟ったのである。
「人を呪わば穴二つ」とは、このことであろう。
また、「百足(むかで、蜈蚣とも書く)を使役する法もあって、
やはり、「蜘蛛」とおなじく、
食物の中に媒体となる「百足」をいれて、人に害をなすという。
『高僧伝』や『大平広記』という書では、
「蠱毒」の術を伝える怪しい者の家に高僧が泊まり、
高僧は出された食事に呪言を唱えてから食べた。
すると、その食物の中から「百足」が飛び出した。
それを見た後、高僧は、平然とした顔で、その食物を食べたという。
さすが伝承元の中国では「蠱毒」の種類も多く、
「蠱狐」「蛇蠱(じゃこ、へびみことも)「狗豕蠱」「犬蠱」「蝗蠱」「蜥蜴蠱」
「蝦蟇(がま)」「蜈蚣(むかで)」「蜘蛛」「金蚕(きんさん)」「蟯螂(ぎょうろう)」などがいて、
不気味なものでは、「金蚕」で、蚕(かいこ)に似た姿の虫が、相手に取り憑き、
体内に侵入し内臓に噛み付き殺す。また、この飼い主は、やはり、富みを得るという。
これは、別項目の「金蚕鬼(チンツァングイ)」を参照してほしい。
荒俣宏原作の映画『帝都物語』で、
実写の、これに似た「腹中虫(ふくちゅうむし)」という妖虫がでていて、
容姿的には、よい参考になる。
このように、使いこなせば悪人にとっていい財産づくりになり、
「蠱主」にとっても厄介な存在となる、という「蠱毒」であるが、
蜘蛛のように祟るものもあり、3年に一度、人を喰わせなければならないものもいる。
このような話もある。
ある男の「蠱毒」が、人を喰わせなければいけない時期になったので、困り果て、
男の嫁を食わそうとしたが、それを知った嫁は、「蠱毒」は鍋の中で寝るので、
前掛けで鍋を覆ってしまい、火を炊いて「蠱毒」を焼き殺したという。
「蠱毒」の対処法法は、みょうがの根を煎じて飲むと、「蠱毒」の毒素を除去し、「
蠱主」の名前が分かるという。
また、明の本草学者・李時珍の『本草網目』によれば、
「蠱毒」の治療法は、相反する「蠱毒」を服用すればよいとされている。
例えば、「蛇蠱」に対しては「蜈蚣(むかで)蠱」、
「蜈蚣蠱」に対しては「蝦蟇(がま)蠱」を薬として飲めばよいとされる。
おそらく、これには、陰陽五行の相克理論が適用されているのであろう。
中国では、夜に鍋に水をはって、朝になると捨てるのは、
「蠱毒」が棲み憑かないようにする為のものであって、
そういう「蠱毒」を追い出そうとする行動に、「蠱毒」自身も気付いて、
お茶などに毒を入れるので、そういう時はお茶は飲まないという。
「蠱毒」は、日本でいう、「憑き物」の起源である。日本で有名な「蠱毒」は、
「狐蠱」「犬蠱」「蛇蠱」である。
出身
中国
日本
出典
●『夷堅志(いけんし)』
●『幻想世界の住人たち。〈中国編〉』 篠田耕一著 新紀元社
●『幻想世界の住人たち「〈日本編〉』 多田克己著 新紀元社
●『幻想動物事典』 草野 巧著 シブヤユウジ画 新紀元社
●『高僧伝』
●『図説日本呪術全書』 豊島泰国 原書房
●『世界の妖怪たち 世界民間文芸叢書別巻』 日本民話の会・外国民話研究会編訳
三井書店
●『捜神記』
●『大平広記』
●『中国妖怪人物事典』 実吉達郎 講談社
●『本草網目』
●『魔術師の饗宴』 山北 篤と怪兵隊 新紀元社
●『水木しげるの憑物百怪』 水木しげる 学研